【社会】症例対照研究とコホート研究
今回は、症例対照研究とコホート研究について解説します。
基本的にどちらの研究も、
「リスク(要因)と病気(結果)の関係性の有無」を明らかにする目的で実施されるのですが、いったいどのような特徴があるのでしょうか。
症例対照研究
まず、対象集団を症例群と対照群の2群に分けます。
そして、症例群と対照群の過去の曝露状況を比較します。
症例対照研究:肺がんと喫煙の関連性を調査
- 対象集団を、肺がんを発症した群(症例群)と肺がんを発症していない群(対照群)に分ける。
- 肺がんを発症した群のうち、過去に何人が喫煙習慣があったか、または喫煙習慣がなかったかを調べる。
肺がんを発症していない群うち、過去に何人が喫煙習慣があったか、または喫煙習慣がなかったかを調べる。 - その結果を比較して、肺がんと喫煙習慣の関連性を明らかにする。
コホート研究
まず、対象集団を曝露群と非曝露群の2群に分けます。
そして、曝露群と非曝露群を未来に向かって追跡調査し、どちらが疾病を罹患しやすいかを比較します。
コホート研究:肺がんと喫煙の関連性を調査
- 対象集団を、喫煙習慣がある群(曝露群)と喫煙習慣がない群(非曝露群)に分ける。
- 喫煙習慣がある群のうち、将来的に何人が肺がんを発症するか、または肺がんを発症しないかを調べる。
喫煙習慣がない群のうち、将来的に何人が肺がんを発症するか、または肺がんを発症しないかを調べる。 - その結果を比較して、肺がんと喫煙習慣の関連性を明らかにする。
2つの研究の相違点
対象集団の分け方と、過去/未来の方向性が異なります。
この微妙な違いが、研究の性質を大きく左右します。
対象集団の分け方による違い
症例対照研究は、疾病の有無を前提に研究を進めていくので、
調査に要する期間や費用が少なくてすみます。
また、症例対照研究は、稀な疾病を調査するのに適しています。
なぜなら、珍しい病気を研究する場合、
これから発症するかどうかの見極めはとても難しいですが、
既に発症している人を見つけ出すことは容易だからです。
コホート研究は、曝露状況をもとに調査を開始するため、
いったい何年後に疾病を発症するのかわかりません。
結果が出るのが5年先、10年先になることも…
ゆえに調査期間や費用が、長く、大きくなりがちです。
過去/未来の方向性による違い
症例対照研究における過去の曝露状況は、曖昧であり不確実性が高いといえます。
例えば、5年前に喫煙習慣があったことぐらいは思い出すことができても、
5年前にタバコを何本吸っていたのか?となってくると、多くの人が正確には答えられないはずです。
また、既に起こってしまったバイアスは取り除くことが難しいという点にも注意が必要です。
コホート研究は、未来に向かっての追跡調査であるため、
曝露状況を正確に把握でき、バイアスの制御も可能である点が優れています。
これから起こることは、管理さえしっかりしていれば、どうとでもなるということですね。
したがって、研究の信頼性はコホート研究の方が高いといえます。