【臨床】経静脈栄養法
今日は、臨床栄養学から「経静脈栄養法」についてお話します。
静脈血中に直接輸液を投与する方法を「経静脈栄養」といいます。
経静脈栄養は直接静脈中に栄養剤を投与するので、経管栄養法に比べると、様々なトラブルをきたしやすくなります。
したがって、経静脈栄養が選択されるのは、
・消化管が機能していない
・消化管の安静が必要
場合です。
経静脈栄養には、2種類の投与方法があります。
・末梢静脈栄養(PPN):輸液を末梢静脈から投与する
・中心静脈栄養(TPN):輸液を中心静脈から投与する
それぞれの特徴を確認しておきましょう。
■末梢静脈栄養(PPN)
投与できるエネルギー量が限られているため、
経口または経腸栄養投与が不十分なときの補充や、中心静脈栄養の適用が困難なときに用います。
○投与期間:2週間未満
○投与エネルギー量:1000kcal程度まで
■中心静脈栄養(TPN)
生命維持に必要なほとんどすべての栄養素を補うことができるので、2週間以上の絶食を必要とする疾患にも用いられます。
○投与期間:2週間以上
○投与エネルギー量:2000kcal以上の投与が可能
○合併症
・ビタミンB1欠乏
ビタミンB1欠乏により、ウエルニッケ・コルサコフ症候群が起こります。
これを予防するためには、ビタミンB1の添加が必要です。
・リフィーディングシンドローム
栄養状態の悪い人に、急速に栄養補給を行うと、リフィーディングシンドロームが起こります。
リフィーディングシンドロームとは、急速な栄養補給により起こる電解質異常のことです。
低リン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症などが起こります。
・バクテリアルトランスロケーション
長期間、中心静脈栄養を行うことで腸粘膜が萎縮し、バクテリアルトランスロケーションが起こりやすくなります。
■経静脈栄養剤(輸液)
末梢静脈栄養、中心静脈栄養に用いられる輸液は、1種類のみではありません。
様々な種類の輸液を組み合わせて投与します。
例えば、高カロリー輸液用基本液+微量元素製剤を組み合わせて投与します。
○高カロリー輸液用基本液
糖質を12~20%程度含有する他、アミノ酸、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム)と
微量元素では亜鉛が添加されています。
○微量元素製剤
長期にわたる中心静脈栄養で欠乏症が懸念される微量元素(鉄、マンガン、亜鉛、銅、ヨウ素)を含有します。
どちらの輸液にも含まれていない微量元素として、セレン、クロムがあります。
このように輸液を組み合わせ、静脈から注入します。
問われる内容は限られていますので、しっかり整理して覚えておきましょう。