【臨床】肝硬変
今回は臨床栄養学から「肝硬変」について解説をします。
肝硬変とは、肝臓の細胞が壊され硬くなり、肝臓の機能が障害された状態をいいます。
肝硬変は、代償期と非代償期の2つの病期に分類されます。
代償期
壊れた肝細胞もありますが、残っている正常な肝細胞が頑張り、なんとか肝機能を維持している状態です。
肝機能は比較的保たれているため、自覚症状はほとんどみられません。
非代償期
肝細胞が壊れてしまい、肝機能が維持できない状態です。
肝臓が働けなくなっている状態であるため、特徴的な症状が出現します。
有名な症状としては、黄疸、腹水、肝性脳症、低血糖などがあります。
■黄疸
黄疸とは、血清ビリルビン濃度が上昇し、皮膚や眼球結膜が黄染することです。
なぜ、体内にビリルビンが溜まるのか…、
それは肝臓がビリルビンを代謝する臓器であるためです。
ビリルビンは、赤血球のヘモグロビンが分解されることで生じます。
分解により生じたビリルビンは、肝臓においてグルクロン酸抱合され、胆汁成分として排泄されます。
肝臓が障害されると、ビリルビンを排泄することができなくなるため、体内に溜まります。
■腹水
腹水とは、腹腔内に水が貯留した状態です。
なぜ、体内に水が溜まるのか…、
それは肝臓がアルブミンを合成する臓器であるためです。
順を追ってご説明します。
① 肝機能が障害されると、アルブミン合成が低下し、低アルブミン血症をきたします。
② 血漿中のアルブミン濃度が低下するため、血漿膠質浸透圧が低下します。
※血漿膠質浸透圧とは、血漿中のアルブミンによりつくられる浸透圧です。
③ 浸透圧が低下することで、血漿中に水を留めておく力が低下するため、水の移動が起こり、腹腔内に水が貯留します。
以上の流れにより、腹水が生じます。
■肝性脳症(高アンモニア血症)
肝臓が障害されると、血液中にアンモニアが過剰に蓄積する高アンモニア血症をきたしやすくなります。
この状態が長期にわたって続くと、肝性脳症を引き起こします。
なぜ、体内にアンモニアが溜まるのか…、
それは肝臓がアンモニアを処理する臓器であるためです。
アミノ酸のゴミであるアンモニア(有毒)は、肝臓の尿素サイクルで尿素(無毒)に変換されて尿中へと排泄されます。
有毒な物質を無毒な物質へと変換することを“解毒機能”と呼びます。
肝臓が障害されると、アンモニアを解毒できず、高アンモニア血症をきたします。
有毒な物質が脳へと送られることとなりますので、脳の機能が低下し、意識障害をきたします。
これが肝性脳症となります。
■低血糖
肝臓が障害されると、早朝空腹時に低血糖をきたしやすくなります。
なぜ、低血糖をきたしやすくなるのか…、
それは肝臓が血糖維持を行う臓器であるためです。
肝臓は、血液中へグルコースを供給する上で重要となる酵素“グルコース-6-ホスファターゼ”をもちます。
この酵素の働きにより血糖維持が行われています。
肝臓が障害されると、血液中へグルコースを供給することができなくなるため、
早朝空腹時に低血糖をきたしやすくなります。
以上、非代償期肝硬変でみられる特徴的な症状についてでした。